断定の助動詞

6 断定の助動詞
◎「なり」
・接続…体言・連体形(準体法)

・活用…形容動詞(ナリ活用)型

未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
なら なり なり なる なれ なれ

※連用形の使い分けは、形容動詞と同様です。

意味
・断定(〜である/〜だ)
・存在(〜にある/〜にいる) ※場所を表す語につく


◎「たり」

・接続…体言

・活用…形容動詞(タリ活用)型

未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
たら たり たり たる たれ たれ

※連用形の使い分けは、形容動詞と同様です。

意味
・断定(〜である/〜だ)


※「なり」は伝聞・推定の助動詞、ナリ活用形容動詞の活用語尾、四段活用の動詞「なる」との、「たり」は完了・存続の助動詞、タリ活用形容動詞の活用語尾との識別が必要ですが、どちらも基本的には接続で判断します。

・「なり(なら/なる/なれ)」の識別
① 活用語の終止形に接続…伝聞・推定の助動詞
② 体言・活用語の連体形に接続…断定の助動詞
③ 形容詞、形容動詞の連用形・格助詞「に」・「と」に接続…動詞「なる」
④ あはれなり/あてなり/優なり/すずろなり/〜かなり/〜げなり、などとなっている
 …ナリ活用形容動詞の活用語尾

※ただし、四段活用など、終止形と連体形が同じものに接続している場合や、ラ変型の活用語に接続している場合には、断定の助動詞と伝聞・推定の助動詞の区別がつきません。そういう場合は、
① 音または匂いがしている場合…推定の助動詞
 例 琴ひくなり。
② 明らかに他人から聞いた話の場合…伝聞の助動詞
③ 「なり」の上に「こと」・「もの」・「の」などを補う場合…断定の助動詞
となります。また、ラ変型の連体形が撥音便になっているものに接続している場合は、伝聞・推定の助動詞となります。

・「たり(たら/たる/たれ)」の識別
① 体言に接続…断定の助動詞
② 活用語の連用形に接続…完了・存続の助動詞
③ 「○々たり」となっている(○=漢字)…タリ活用形容動詞の活用語尾
こちらは接続だけで見分けられます。



問十四 次の括弧内を文法的に説明しなさい。

Ⅰ ほととぎすは、いつしかしたり顔に聞こえたるに、卯の花・花橘などに宿りをして、はた隠れ①(たる)も、ねたげ②(なる)心ばへ③(なり)。

Ⅱ 「奥山に猫またといふものありて、人を食ふ①(なる)」と人の言ひけるに、「山②(なら)ねども、これらにも猫の経上がりて、猫またに③(なり)て、人とることはあん③(なる)ものを」といふ者あり。