謙譲語

2 謙譲語
 動作の客体を高める働きをします。現代語では謙譲語が衰退しているところがあるので、多少ぎこちない訳にならざるを得ない場合もありますが、基本的には、

お〜申し上げる/〜させていただく/〜て差し上げる

などと訳します。現代語に相当する謙譲語があれば、それを使います。

◎謙譲の補助動詞
他の動詞の下につき、謙譲の意味を添える。
  例 「奉る」・「聞こゆ」・「申す」・「参る」・「参らす」・「給ふ(下二段)」

◎本動詞

・「奉る」・「参らす」=「与ふ」・「授く」などの謙譲語。
訳:差し上げる

・「参る」・「まうづ」=貴人・神仏の処へ「行く」・「来」意味の謙譲語。
   訳:参上する/参詣する

・「まかる」・「まかづ」=貴人・神仏の処から退出する意味の謙譲語。
   訳:退出させていただく/退出する/おいとまする

・「申す」・「聞こゆ」・「聞こえさす」=「言ふ」の謙譲語。
   訳:申し上げる

・「給ふ(下二段)」=「受く」・「もらふ」・「食ふ」・「飲む」などの謙譲語。
   訳:いただく

・「侍り」・「候ふ」=貴人の側に仕える意味の謙譲語。
   訳:お仕えする/伺候する

・「存ず」=「思ふ」の謙譲語。
  訳:存じる/お思い申し上げる

・「承る」=「受く」・「聞く」、承知する意味の謙譲語。
   訳:うけたまわる/承知いたす

・「奏す」=帝に対して申し上げる意味の謙譲語。
   訳:奏上する

・「啓す」=中宮・皇后・皇太子・皇太后太皇太后に対して申し上げる意味の謙譲語。
   訳:申し上げる

・「つかまつる」・「つかうまつる」=「す」の謙譲語。様々な意味で用いる。
  訳:いたします(文脈に応じる)


◎「たまふ」の用法

ハ行四段活用…尊敬語

・本動詞=「与ふ」・「授く」などの尊敬語。
  訳 くださる
補助動詞=他の動詞の下につき、尊敬の意味を添える。
  訳 お〜になる/〜なさる

ハ行下二段活用…謙譲語

・本動詞=「受く」・「もらふ」・「食ふ」・「飲む」などの謙譲語。
  訳 いただく

補助動詞=会話・手紙で、話し手・書き手の動作「見る」・「聞く」・「思ふ」などにつき、聞き手・読み手に対する敬意を表す。
  訳 存じます/〜ます


問二 次の各文を敬語の用い方に注意して、現代語訳しなさい。

① みづからはえなむ思ひ給へ立つまじき。

② 母君泣く泣く奏して、(桐壺更衣を)まかでさせ奉り給ふ。

③ 中納言参り給ひて、御扇(を中宮に)奉らせたまふ。