過去・完了の助動詞

3 過去・完了の助動詞

 過去の助動詞には「き」、「けり」、完了の助動詞には「つ」、「ぬ」、「たり」、「り」があります。

・接続…連用形(但し、「り」だけは、サ変の未然形か四段の已然形)

◎「き」
・活用…特殊型

未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
しか

※未然形の「せ」は、反実仮想の際にだけ使う。

意味
・過去(直接経験の過去・〜た)


◎「けり」
・活用…ラ変型

未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
(けら) けり ける けれ

意味
・過去(伝聞回想・〜た/〜たそうだ)
・詠嘆(〜たなあ/〜たことよ)
 ※詠嘆は和歌の句切れ(意味的に切れるところ)、会話の文末が主。


◎「つ」、「ぬ」
・活用 「つ」…下二段型/「ぬ」…ナ変型

未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
つる つれ てよ
ぬる ぬれ

意味
・完了(〜た/〜てしまった)
・強意(きっと〜/〜てしまう)
※下に推量の助動詞を伴う
・並列(〜たり)
※終止形を、接続助詞のように用いる
例 かけ足になっつ、あゆませつ、はせつ、ひかへつ
備中守うきぬ沈みぬし給ひけるを

※「つ」と「ぬ」の違い
 自然に完了する場合(自動詞が多い)には「ぬ」、人為的に完了する場合(他動詞が多い)には「つ」が使われる傾向。
 例 日も暮れぬ。
門よくさしてよ。


◎「たり」、「り」
・活用…ラ変型

未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
たら たり たり たる たれ たれ

意味
・存続(〜ている/〜てある)
※まずは存続で訳してみる。
・完了(〜た/〜てしまった)
 ※存続でうまくいかないときは完了で訳す。


問四 括弧の中の助動詞を、適当な形に改めなさい。

 ① 今見れば、「かうこそ燃え( けり )」と、心得つるなり。   (     )

 ② 世の中にたえて桜のなかり( き )ば春の心はのどけからまし (     )

 ③ 天人の中に持たせ( たり )箱あり。            (     )

 ④ 髪もいみじく長くなり( ぬ )む。              (     )

 ⑤ 恥をも忘れ、盗みもし( つ )べきことなり。        (     )

 ⑥ 朝ぼらけ有り明けの月と見るまでに吉野の里に降れ( り )白雪(     )


問五 次の括弧内の助動詞の意味と活用形を答えなさい。
 
 ① からくして、あやしき歌ひねり出だせ(り)。

              意味(     ) 活用形(     )形

 ② あらし吹く三室の山の紅葉ばは竜田の川の錦なり(けり)

              意味(     ) 活用形(     )形

 ③ 一百九十歳にぞ、今年はなりはべり(ぬる)。

              意味(     ) 活用形(     )形

 ④ しのびてや迎へ奉り(て)まし。

              意味(     ) 活用形(     )形

 ⑤ 春来ぬと人は言へどもうぐひすの鳴か(ぬ)かぎりはあらじとぞ思ふ

              意味(     ) 活用形(     )形

 ⑥ つひに行く道とかねて聞き(しか)ど、

              意味(     ) 活用形(     )形