終助詞
4 終助詞
終助詞は文末で使います。接続がポイントになることが多いので、しっかり覚えましょう。
願望の終助詞
◎「ばや」
接続…未然形
意味
・自分の動作の実現を願望する(〜たい)
◎「なむ」
接続…未然形
意味
・他人・人以外の動作の実現を願望(他にあつらえる)する(〜てほしい)
◎「てしがな(てしか/てしかな)」・「にしがな(にしか/にしかな)」
接続…連用形
意味
・詠嘆を込めた願望(〜たいものだなあ)
◎「がな」・「もがな(もが)」・「もがも」
接続
・「がな」…体言、格助詞「を」
・「もがな」、「もがも」…体言、形容詞・形容動詞の連用形
意味
・詠嘆を込めた願望(〜があればなあ/〜が欲しいなあ/〜といいなあ)
禁止の終助詞
◎「な」
接続…終止形(ラ変型には連体形)
◎「そ」
接続…連用形
※「な〜そ」の形で禁止を表す。
詠嘆・感動の終助詞
◎「か」、「かな」、「な」
接続…体言・連体形
意味
・詠嘆・感動(〜なあ/〜ことよ)
◎「ものを」
接続…連体形
意味
・詠嘆・感動(〜のになあ/〜のにねえ)
確認の終助詞
◎「かし」
接続…文末(命令形につくことも多い。係助詞「ぞ」について「ぞかし」となることも多い)
意味
・強く念を押す(〜よ/〜ね)
問七 次の各文を、終助詞に注意して、現代語訳しなさい。
① ほととぎすの声たづねに行かばや
② 追ひ風やまず吹かなむ。
③ 心あらむ友もがなと、都恋しうおぼゆ。
④ いかでこのかぐや姫を得てしがな。
⑤ うれしくものたまふものかな。
⑥ 恋しくは、来ても見よかし。
⑦ 便なきこと、かくなせそ。
副助詞
3 副助詞
現代語とあまり変わらないものが多いのですが、現代語にない「だに」、「すら」、現代語と意味が違うことが多い「さへ」は、解釈のポイントになることが多いので、注意が必要です。
◎「だに」
意味
・最小限(せめて〜だけでも)
例 散りぬとも 香だに残せ 梅の花
(散ってしまうとしても、せめて香りだけでも残しておくれ。梅の花よ。)
・類推(〜さえ)
例 光やあると見るに、螢ばかりの光だになし。
(光があるか、と見るが、蛍くらいの光さえない。)
◎「すら」
意味
・類推(〜さえ/〜でも)
例 言問はぬ木すら妹と兄ありとふを ただ独子にあるが苦しさ
(ものを言わない木でさえ兄弟があるというのに、ただ一人っ子であることの辛さよ。)
◎「さへ」
意味
・添加(〜まで)
例 あづさ弓おして春雨けふ降りぬ あすさへ降らば 若菜摘みてむ
(一面に春雨が今日降ったよ。明日まで降るならば、若菜を摘んでしまおう。)
・類推(〜さえ)
鎌倉時代以降に出てきた意味。仮名遣いこそ違え、現代語と同様の意味です。
◎「し」
意味
・強意(訳に入れない/ちょうど〜)
例 唐衣きつつなれにしつましあれば はるばる来ぬる旅をしぞ思ふ
※訳に入れないのが基本ですが、識別問題で問われることがあります。上の例だと、「きつつなれにし」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形ですが、「つましあれば」の「し」と、「旅をしぞ思ふ」の「し」は、副助詞となります。どちらも、抜いても文法的に成り立ちますが、「きつつなれにし」の「し」は、「つま」という体言につづくので、前の「に」(完了の助動詞「ぬ」の連用形)に文法的な矛盾が生じます。他にサ変の連用形とも区別が必要です。
◎その他の副助詞
・「など」=〜など/〜などと
・「のみ」=〜だけ
・「ばかり」=〜くらい/〜だけ
・「まで」=〜まで
※これらはほぼ現代語の感覚で、意味がわかります。
問六 次の各文を、副助詞に注意して、現代語訳しなさい。
① 命だに心にかなふものならば なにか別れの悲しからまし
② 聖などすら、前の世のこと夢に見るは、いと難かなるを、
③ 思ひきや すぎにし人の悲しきに 君さへつらくならむものとは
接続助詞
2 接続助詞
接続助詞の場合は、接続(どの品詞・語・活用形につくか)が大事なので、訳の仕方とともに覚えましょう。
◎「ば」の用法
入試問題でもポイントになることが多い、超重要事項です。
・未然形+ば…順接仮定条件
訳 (もし)〜としたら/〜ならば
例 世の中に絶えて桜のなかりせば
(この世の中に、もしまったく桜がなかったとしたら)
・已然形+ば…順接確定条件
訳
原因・理由(〜ので/〜から)
例 暁より雨降れば、同じ所に泊まれり。
(明け方から雨が降るので、同じ所に泊まった。)
偶然条件(〜と/〜ところ)
例 弁の宰相の君の戸口をさしのぞきたれば、昼寝したまへるほどなりけり。
(弁の宰相の君の部屋の戸口を覗いたところ、昼寝をしていらっしゃる時であった。)
恒常条件(〜といつも/〜と必ず)
例 命長ければ恥多し。
(命が長いと必ず、恥をかくことが多い。)
※「已然形+ば」は頻繁に出てくる表現ですが、恒常条件はめったにないので、通常は、原因・理由と偶然条件のうち、文脈に合う方で訳していきます。「已然形+ば」は、現代語の「仮定形+ば」と形が同じになることも多いのですが、あくまで「確定条件」であって「仮定条件」ではないので、必ず訳しましょう。
問三 次の括弧内の「ば」の用法を、後のア〜オから選びなさい。
① 老いぬれ(ば) さらぬ別れのありといへば いよいよ見まくほしき君かな
② 近寄りて見けれ(ば)、いまだ見ぬ人なりけり。
③ 年五十になるまで至らざらむ芸を(ば)捨つべきなり。
④ 本の笛をかへしとらんとも言はざりけれ(ば)、長くかへてやみにけり。
⑤ 「かしこより人おこせば、これをやれ」
ア 順接仮定条件 イ 原因・理由 ウ 偶然条件
エ 恒常条件 オ 係助詞
◎「とも」
接続…終止形(ラ変型も終止形。但し、形容詞型は連用形)
意味
・逆接仮定条件(〜としても/〜ても)
例 用ありて行きたりとも、その事果てなば、とく帰るべし。
(用があって行ったとしても、その事が終わったならば、早く帰れ。)
◎「ど」、「ども」
接続…已然形
意味
・逆接確定条件(〜けれど/〜けれども/〜が/〜のに)
例 足ずりをして泣けども、かひなし。
(地団駄を踏んで泣くけれども、どうしようもない。)
※以上が最も基本的な接続助詞となります。
◎「が」、「に」、「を」
これらは、元々は格助詞であったものが、接続助詞としても使用されるようになったものです。「が」は、現代語でも同様に格助詞と接続助詞があるので、簡単に見分けがつきますが、「に」と「を」は、格助詞か接続助詞かが微妙な時もあり、しかも、順接でも逆接でも使うので、識別が難しくなっています。
ポイントは「に」・「を」の上に「もの・こと・の・とき」などを補うかどうかで、
補うなら格助詞、
必要ないなら接続助詞
となります。
また、述語動詞が
目的語(〜を)をとるかどうか、(「を」の場合)
とるなら格助詞
とらないなら接続助詞
補語(〜に)をとるかどうか、(「に」の場合)
とるなら格助詞
とらないなら接続助詞
という点も考慮するとよいでしょう。
接続…連体形(準体法ではない)
意味
「が」…逆接確定条件(〜が)
「に」、「を」
・順接確定条件(〜ので・から/〜と・ところ/〜といつも・と必ず)
例 かく歌ふを聞きつつ漕ぎ来るに、黒鳥といふ鳥、岩の上に集まりをり。
(このように歌うのを聞きながら漕いで来ると、黒鳥という鳥が、岩の上に集まっている。)
・逆接確定条件(〜けれど・が・のに)
例 参りたまふべき由ありけるを、重く煩ふ由申して参らず。
(参上なさってくださいとの命令があったが、重く病気を患う次第を申し上げて、参上しない。)
問四 次の各文を、接続助詞に注意して、現代語訳しなさい。
① 来むとありしを、さやある。
② 目をかけて待ち渡るに、花もみな咲きぬれど音もせず。
③ はじめは声をあげ叫びけるが、後には声もせざりけり。
④ この女の童は、絶えて宮仕へつかうまつるべくもあらずはんべるを、もてわづらひはべり。
⑤ 涙のこぼるるに目も見えず、ものも言はれず。
◎「で」
接続…未然形
意味
・打消(〜ないで/〜なくて)
◎「つつ」
接続…連用形
意味
・反復(〜ては/繰り返し〜て)
・継続(〜ながら)
・並列(〜ながら)
◎「ながら」
接続…動詞型の連用形、形容詞・形容動詞の語幹、体言など
意味
・継続(〜ながら/〜まま)
・並列(〜ながら)
・逆接・矛盾(〜けれども/〜のに)
例 近くに見えながら、行きつかず。
(近くに見えているのに、行き着かない。)
◎「ものの」、「ものから」、「ものを」
接続…連体形
意味
・逆接確定条件(但し、「ものから」は、近世以降、順接確定条件)
◎「て」、「して」
接続…連用形
意味
・単純接続(〜て)
◎「からに」
接続…連体形
意味
・即時(〜とすぐに/〜やいなや)
・原因・理由(〜ので/〜から)
・逆接仮定条件(「〜むからに」の形)(〜としても/〜ても)
問五 次の各文を、接続助詞に注意して、現代語訳しなさい。
① 扇のにはあらで、くらげのななり。
② 見渡せば 近きものから 岩隠り かがよふ玉を取らずは止まじ
③ 日を経つつ 我何ごとを思はまし 風の前なる木の葉なりせば
④ 日は照りながら、雪の、頭に降りかかりける。
⑤ つれなくねたきものの、忘れがたきに思す。
格助詞
第三章 助詞
1 格助詞
格助詞は、現代語とあまり変わらないので、現代語にないものや、現代語と違う用法だけを覚えてやれば、他は現代語と同じです。
◎「が」、「の」の用法
・主格(〜が)
主語であることを示します。現代語の「が」の用法。
・連体修飾格(〜の/〜のような)
体言(名詞)を修飾します。現代語の「の」の用法。たまに比喩的に「〜のような」と訳した方がよい場合もあります。
・準体格(〜のもの)
本来なら体言を修飾するところを、下の体言を省略します。現代語の「の」の用法
・同格(〜で)
古文独特の用法で、入試超頻出。「の」(まれに「が」)を挟んで、上のものと下のものとが、同じであることを示します。通常、
体言(または準体法の連体形)+の+準体法(または体言)+格助詞(または係助詞)
という形をとり、
例 大きなる柑子の木の枝もたわわになりたるに、
この場合、「大きなる柑子の木」と「枝もたわわになりたる(もの)」が同じ木で、全体で格助詞「に」にかかってきます。
訳は、「大きな柑子の木で、枝もたわむくらいに実がなっているものに、」となります。
こうした同格の用法は、英語の関係代名詞に似ているので、英語の得意な人は、「先行詞+関係代名詞」のようなものだと思えばよいでしょう。
・連用修飾格(比喩)(〜のように)
用言を修飾します。
例 例の狩りしにおはします。
この場合、連体修飾格と見て、「いつもの狩りをしにいらっしゃる」と訳すことも出来ますが、「例の」が動詞を修飾している連用修飾格と見て、「いつものように狩りをしにいらっしゃる」と訳した方が、良いでしょう。
問一 次の括弧内の格助詞の用法を、後のア〜オから選びなさい。
① 草の花は、瞿麦。唐(の)はさらなり。 ( )
② かぐや姫(の)、皮衣を見ていはく、 ( )
③ 「このほどの事くだくだしければ、例(の)もらしつ」 ( )
④ 白き鳥(の)嘴と脚と赤き、鴫の大きさなる ( )
⑤ 大進生昌(が)家に、宮の出でさせたまふに、 ( )
ア 主格 イ 連体修飾格 ウ 準体格 エ 同格 オ 比喩
◎「より」
・起点(〜から/〜より)
現代語では、「から」が用いられることが多いのですが、手紙の場合は、今も「より」を使いますね。
・比較の基準(〜より)
現代語と同じ用法です。
・経過点(〜を通って/〜から)
場所を表す言葉についたら可能性があります。それほど気にしなくてもよいでしょう。
・手段・方法(〜で/〜によって)
入試頻出。
例 己夫し徒歩より行けば見るごとに音のみし泣かゆ
この場合、「徒歩(かち)より」を「徒歩で」と訳します。
・即時(〜とすぐに/〜やいなや)
入試頻出。英語の「as soon as」のような用法です。
例 門引き入るるより、けはひあはれなり。
この場合、「門引き入るるより」を「(牛車を)門から引き入れるとすぐに」と訳します。
◎「に」
・場所・時間・対象・結果・基準など(〜に/〜で)
基本的には現代語の「に」と同じですが、現代語では「で」を使う場合でも、古語では「に」を使う場合があるので、文脈によっては、「で」と訳すこともあります。
・敬意(〜におかれては)
高貴な人が主語である場合、まるで人ではなく場所であるかのように表現して、敬意を表します。「主語+に」となるので、慣れればすぐにわかりますが、慣れないと、主語を見失いがちです。
例 弘徽殿には、久しく上の御局にも参上りたまはず。
この場合、「弘徽殿」が「参上りたまはず」の主語なので、「弘徽殿の女御におかれては、帝の傍のお部屋にも参上なさらない」と訳すことになります。
・原因・理由(〜によって/〜のために)
現代語の「に」にも同じようなニュアンスはあります。
・強意(ひたすら〜)※動詞の連用形+に+同じ動詞
現代語ても「走りに走って逃げた」などと使います。
◎「して」
・手段・方法(〜で/〜を用いて)
例 御衣して耳をふたぎたまひつ。
この場合、「お着物で耳を塞ぎなさった」となります。
・人数・範囲(〜で/〜と一緒に)
例 二人して打たむには、
この場合、「二人で打つとしたら」となります。
・使役の対象(〜に/〜を使って)
使役の対象を示す場合は、和文では現代語同様「に」を使うことが多いのですが、漢文訓読では「して」を使います。
◎「にて」
現代語にはない助詞ですが、ほぼ「で」と訳せばOKです。
・場所(〜で/〜において)
現代語でも文章語では使うことがあります。
・年齢・時間(〜で)
・手段・方法(〜で/〜を使って)
入試頻出。
例 舟にて渡る。
この場合、「舟で渡る」となります。
・資格(〜で/〜として)
例 太政大臣にて位を極むべし。
この場合、「太政大臣として位を極めるだろう」となります。
・原因・理由(〜で/〜によって)
◎「と」
基本的に現代語と同じですが、引用の「と」は、文末に接続するので注意が必要です。
・動作をともにする相手(〜と)
・変化の結果(〜と)
・引用(〜と/〜と思って/〜と言って)
・強意(ひたすら〜/どんどん〜) ※動詞の連用形+と+同じ動詞
◎「とて」
・引用して下に続ける(〜と言って/〜と思って/〜として)
◎その他の格助詞 ※現代語と同じ
・「を」=〜を
・「へ」=〜へ
・「から」=〜から
問二 次の文を、格助詞に注意して、現代語訳しなさい。
① ある時、思ひ立ちて、ただひとりかちより詣でけり。
② 名を聞くより、やがて面影はおしはからるる心地す。
③ そこなりける岩に、およびの血して書きつけける(歌)。
④ 御使にも、女房して、土器さし出でさせたまひて、強ひさせたまふ。
⑤ 蛤の貝にて髭を抜くもあり。
上代の助動詞
8 上代の助動詞
古語の助動詞の中には、上代(奈良時代以前)には用いられていたのに、平安時代以降は用いられなくなったものもあります。通常、古典文法は平安時代中期(『源氏物語』や『枕草子』の時代)を基準とするので、あまり習う機会がないでしょうが、『万葉集』の和歌などで使用されることがあるので、知っておきたいものです。
◎「ゆ」、「らゆ」
・接続 「ゆ」…四段・ナ変・ラ変動詞の未然形
「らゆ」…下二段動詞の未然形
・活用…下二段型
未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
---|---|---|---|---|---|
え | え | ゆ | ゆる | ゆれ | 〇 |
らえ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
意味
「ゆ」
・受身(〜れる)
・自発(自然に〜れる)
・可能(〜ことができる)
「らゆ」
・可能(〜ことができる)
※平安時代以降の「る」、「らる」に相当します。「らゆ」は、打消を伴った不可能の表現しか使用例がありませんが、「ゆ」は広く使われ、「おぼゆ」、「見ゆ」、「聞こゆ」などは、動詞の未然形に「ゆ」がついたものが一語化したものです。
◎「す」
・接続…未然形(但し、「聞こす」のような特別な形につくこともある)
・活用…四段型
未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
---|---|---|---|---|---|
さ | し | す | す | せ | せ |
意味
・尊敬(お〜になる/〜なさる)
※「す」も動詞の未然形についたものが一語化した「聞こす」、「のたまはす」などがあります。
上代助動詞の使用例(『万葉集』/『古事記』より)
① あぢ群のとをよる海に船浮けて白玉採ると人に知ら(ゆ)な
受身・終止形
② あかねさす昼は物思ひぬばたまの夜はすがらに音のみし泣か(ゆ)
自発・終止形
③ 湊廻に満ち来る潮のいや増しに恋は余れど忘れ(え)ぬかも
可能・未然形
④ ほととぎすいたくな鳴きそひとり居て寝の寝(らえ)ぬに聞けば苦しも
可能・未然形
⑤ 二柱の神、天の浮き橋に立た(し)て
尊敬・連用形
比況の助動詞
7 比況の助動詞
◎「ごとし」
・接続…体言・連体形・格助詞「が」、「の」など
・活用…形容詞(ク活用)型
未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
---|---|---|---|---|---|
ごとく | ごとく | ごとし | ごとき | ○ | ○ |
※「ごとし」は形容詞型の活用ですが、助動詞に続く用法は、連用形に断定の助動詞「なり」がつく場合(「ごとくなり」となります)しかないので、ラ変型の活用はありません。
意味
・比況(〜ようだ)
・例示(〜ような) ※具体例につき、連体形(準体法)
※他に「やうなり」(名詞+断定の助動詞)も比況の助動詞と同様に使われます。
問十五 次の括弧内の助動詞の意味と活用形を答えなさい。
① 音、いかづちの(ごとし)。
意味( ) 活用形( )形
② 往生要集(ごとき)の抄物を入れたり。
意味( ) 活用形( )形
断定の助動詞
6 断定の助動詞
◎「なり」
・接続…体言・連体形(準体法)
・活用…形容動詞(ナリ活用)型
未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
---|---|---|---|---|---|
なら | なり | なり | なる | なれ | なれ |
○ | に | ○ | ○ | ○ | ○ |
※連用形の使い分けは、形容動詞と同様です。
意味
・断定(〜である/〜だ)
・存在(〜にある/〜にいる) ※場所を表す語につく
◎「たり」
・接続…体言
・活用…形容動詞(タリ活用)型
未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
---|---|---|---|---|---|
たら | たり | たり | たる | たれ | たれ |
○ | と | ○ | ○ | ○ | ○ |
※連用形の使い分けは、形容動詞と同様です。
意味
・断定(〜である/〜だ)
※「なり」は伝聞・推定の助動詞、ナリ活用形容動詞の活用語尾、四段活用の動詞「なる」との、「たり」は完了・存続の助動詞、タリ活用形容動詞の活用語尾との識別が必要ですが、どちらも基本的には接続で判断します。
・「なり(なら/なる/なれ)」の識別
① 活用語の終止形に接続…伝聞・推定の助動詞
② 体言・活用語の連体形に接続…断定の助動詞
③ 形容詞、形容動詞の連用形・格助詞「に」・「と」に接続…動詞「なる」
④ あはれなり/あてなり/優なり/すずろなり/〜かなり/〜げなり、などとなっている
…ナリ活用形容動詞の活用語尾
※ただし、四段活用など、終止形と連体形が同じものに接続している場合や、ラ変型の活用語に接続している場合には、断定の助動詞と伝聞・推定の助動詞の区別がつきません。そういう場合は、
① 音または匂いがしている場合…推定の助動詞
例 琴ひくなり。
② 明らかに他人から聞いた話の場合…伝聞の助動詞
③ 「なり」の上に「こと」・「もの」・「の」などを補う場合…断定の助動詞
となります。また、ラ変型の連体形が撥音便になっているものに接続している場合は、伝聞・推定の助動詞となります。
・「たり(たら/たる/たれ)」の識別
① 体言に接続…断定の助動詞
② 活用語の連用形に接続…完了・存続の助動詞
③ 「○々たり」となっている(○=漢字)…タリ活用形容動詞の活用語尾
こちらは接続だけで見分けられます。
問十四 次の括弧内を文法的に説明しなさい。
Ⅰ ほととぎすは、いつしかしたり顔に聞こえたるに、卯の花・花橘などに宿りをして、はた隠れ①(たる)も、ねたげ②(なる)心ばへ③(なり)。
Ⅱ 「奥山に猫またといふものありて、人を食ふ①(なる)」と人の言ひけるに、「山②(なら)ねども、これらにも猫の経上がりて、猫またに③(なり)て、人とることはあん③(なる)ものを」といふ者あり。