形容詞・形容動詞・音便

4 形容詞

◎ク活用

語幹 未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
おもしろ けれ
  から かり かる かれ

※カリ活用(から・かり・○・かる・○・かれ)は、命令形を除き、助動詞に続く時しか使わない。

未然形

・助詞「は」に続く(仮定を表す)  (おもしろく)は、

・助動詞に続く           (おもしろから)ず

連用形

・連用修飾             (おもしろく)なる

・連用中止法            (おもしろく)、

・助詞に続く            (おもしろく)て

・助動詞に続く           (おもしろかり)けり

終止形

・終止法              (おもしろし)。

連体形

・連体修飾             (おもしろき)時

・準体法(体言の代わりとなる)   (おもしろき)は無し。

・係り結び          これぞ(おもしろき)。

・助動詞に続く           (おもしろかる)べし

已然形

・助詞に続く            (おもしろけれ)ども

・係り結び         これこそ(おもしろけれ)。

命令形

・命令する             (おもしろかれ)。

◎シク活用

語幹 未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
をか しく しく しき しけれ
しから しかり しかる しかれ

未然形

・助詞「は」に続く(仮定を表す)  (をかしく)は、

・助動詞に続く           (をかしから)ず

連用形

・連用修飾             (をかしく)なる

・連用中止法            (をかしく)、

・助詞に続く            (をかしく)て

・助動詞に続く           (をかしかり)けり

終止形

・終止法              (をかし)。

連体形

・連体修飾             (をかしき)時

・準体法(体言の代わりとなる)   (をかしき)は無し。

・係り結び          これぞ(をかしき)。

・助動詞に続く           (をかしかる)べし

已然形

・助詞に続く            (をかしけれ)ども

・係り結び         これこそ(をかしけれ)。

命令形
・命令する             (をかしかれ)。



※特殊な形容詞

「多し」…ラ変動詞「多かり」でもある。

語幹 未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
けれ
から かり かり かる かれ かれ


「同じ」…連体修飾・準体法のとき、終止形と同じ形が用いられることが多い。


問五 次の括弧内の形容詞の活用の種類、活用形を答えなさい。

① (いみじく)大きなる川あり。
                 (     )活用(       )形
② (悪く)はあらず。
                 (     )活用(       )形
③ 花(うるはし)。
                 (     )活用(       )形
④ (同じく)は、あの事沙汰しおきて、
                 (     )活用(       )形
⑤ (あたらしき)事なり。
                 (     )活用(       )形


問六 次の括弧の中の形容詞を適当な形に直しなさい。

・①( やすし )はえ殺さじ。

・②( 心にくし )これを思ふ。

・これこそ③( 高し )。




◎形容詞の語幹の用法
 形容詞の語幹だけを使う表現があり、要注意です。この場合の語幹は、ク活用なら言葉通りに語幹だけを使いますが、シク活用では、終止形と同じ形を使います(用法が違うので、終止形ではなく、語幹相当部分となります)。

・語幹+さ…名詞となる。
 例 「おもしろさ」、「うつくしさ」
 現代語も同様なので、注意するのは意味だけです。例えば、「おもしろさ」とあっても、現代語訳は「趣深さ」となったりします。

・語幹+み
① 名詞となる。
 例 「深み」、「茂み」
 現代語も同様。

② 原因・理由を表す。
 例 瀬をはやみ(=川の瀬の流れがはやいので)
 上代奈良時代以前)の用法なので、和歌の中でしか使いません。ただし、出てきた場合は、間違いなく問われます。入試では絶対必修。

・語幹+の…連体修飾語となる。
例 おもしろのこと(=趣のあること)
 現代語訳は、連体形で連体修飾する場合と同じです。他の語幹の用法と組み合わせて使うこともあります。

・語幹+がる…動詞となる。
 例 「おもしろがる」、「なつかしがる」
 現代語も同様ですが、意味だけは要注意。「おもしろがる」の現代語訳は、「趣を感じる」などとなります。

感動詞+語幹…感動表現となる。
 例 あなうつくし(=まあ、かわいらしい)
 この用法で使う感動詞は、ほとんどの場合「あな」ですが、他に「いや」、「あら」なども使われることもあります。いずれにせよ、訳は「まあ/ああ+形容詞の意味」となります。

・語幹+げ+ナリ…形容動詞となる。
 例 うつくしげなり(=かわいらしそうだ)
 現代語訳は、「形容詞の意味+そうだ/様子だ」などとなります。「げ」は形容動詞の目印にもなります。


問七 次の各文の形容詞の語幹を使った表現の用法を、後のア〜エからそれぞれ選びなさい。

① あなたふと。 (   )

② 和歌の浦に潮満ち来れば潟をなみ (   )

③ ゆかしさつのれば、 (   )

④ なつかしのことや (   )

⑤ 風情のやさしみあり。 (   )

 ア 名詞  イ 連体修飾語  ウ 原因・理由  エ 感動表現



5 形容動詞

◎ナリ活用

語幹 未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
あはれ なら なり なり なる なれ なれ


※「〜か・なり」、「〜げ・なり」となるものが多い。

連用形の用法

・連用修飾         (あはれに)思ふ。

・中止法 (あはれに)、

・助詞に続く  (あはれに)して、

・助動詞に続く (あはれなり)けり。

※連用形の「なり」は、助動詞に続く場合にしか使いません。


◎タリ活用

語幹 未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
堂々 たら たり たり たる たれ たれ
 


※すべて漢語で、「〇々・たり」(同じ漢字の繰り返し)となるものが多い。

連用形の用法

・連用修飾         (堂々と)立つ。

・中止法 (堂々と)、

・助詞に続く  (堂々と)して、

・助動詞に続く (堂々たり)き。

※連用形の「たり」は、助動詞に続く場合にしか使いません。


問八 次の括弧内の形容動詞の活用の種類・活用形を答えなさい。

① (あはれなる)もの
                (     )活用(       )形

② (つれづれに)心細くのみおぼゆ。
                (     )活用(       )形

③ 蒼海(漫々と)して、
                (     )活用(       )形

④ これぞ(をかしげなる)。
                (     )活用(       )形

⑤ (閑かなら)ば、
                (     )活用(       )形


問九 次の中から形容動詞をすべて選びなさい。

① すでに  ② 茫々と  ③ さらに  ④ はるかに  ⑤ なめげに

(               )

※形容動詞の中でも、もともと副詞だった「さらなり」、「無下なり」、「いかなり」などは、連用修飾する「さらに」、「無下に」、「いかに」は、副詞として扱います。


◎形容動詞の語幹の用法
 形容詞の語幹の用法に準じます。ただし、「語幹+み」はありません。

・語幹+さ…名詞となる。
例 「あはれさ」、「閑かさ」

・語幹+の…連体修飾語となる。
例 あはれのこと

・語幹+がる…動詞となる。
 例 「あはれがる」

感動詞+語幹…感動表現となる。
 例 あな無惨(=まあ、むごい)



6 音便
 発音の都合上、表記が本来の活用から変化したものを、音便と言います。音便のポイントは、
① 元の活用が分かること。
② 音便の種類が分かること。
の二点です。「活用形の役割」と、動詞の場合は「活用の行」に注意すれば、元の活用は分かるでしょう。
 ただし、現代語でも音便で使うのが普通の動詞は、違和感が無いので要注意です。


◎イ音便
 本来の活用が、「い」に変化したもの。

 書きて → 書いて (カ行四段活用の動詞「書く」の連用形イ音便)
 にくきこと → にくいこと (形容詞「にくし」の連体形イ音便)

◎ウ音便
 本来の活用が、「う」に変化したもの。

 笑ひて → 笑うて (ハ行四段活用の動詞「笑ふ」の連用形ウ音便)
 おもしろくて → おもしろうて  (形容詞「おもしろし」の連用形ウ音便)

◎促音便
 本来の活用が、「っ」に変化したもの。

 参りて → 参つて (ラ行四段活用の動詞「参る」の連用形促音便)
※促音(「っ」のことです)は、「つ」と表記される場合もあります。

◎撥音便
 本来の活用が、「ん」に変化したもの。

 死にて → 死んで (ナ行変格活用の動詞「死ぬ」の連用形撥音便)
 多かるめり → 多かんめり (形容詞「多し」の連体形撥音便)
 あはれなるめり → あはれなんめり (形容動詞「あはれなり」の連体形撥音便)

※撥音便無表記
 ラ変型の活用語の連体形に助動詞(「めり」、「なり(伝聞・推定)」、「らし」など)がつく時、撥音便になりやすく、撥音(=「ん」)が表記されないことも多い。
 例
あるめり → あんめり(撥音便) → あめり(撥音便無表記)


問十 次の文中の音便となっている語に傍線を引き、もとの形に直し、音便の種類を答えなさい。

① 五月のつごもりに雪いと白う降れり。
        もとの形(          ) (   )音便

② 薩摩守喜んで、「さらばいとま申して」とて、
          もとの形(          ) (   )音便
  
③ 殿上の小庭にかしこまつてぞ候ひける。
        もとの形(          ) (   )音便