動詞の活用
3 動詞の活用
動詞は、用言(単独で述語になることができる単語。動詞と形容詞と形容動詞)の中で、一部の例外を除き、終止形がウ段で終わるものです。名前の通り、おもに動作を表します。現代語とは違った活用の仕方をする上に、現代語とは仮名遣いが違ったり、言い切り方(終止形)の形が違ったりするものもあるので、注意が必要です。
動詞は、活用しない部分である「語幹」と、活用する部分である「活用語尾」から成ります。
◎四段活用(〜ア・ず)
ア、イ、ウ、エの四段を使う。現代語の五段活用に相当する。
語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
---|---|---|---|---|---|---|
ア | イ | ウ | ウ | エ | エ | |
書 | か | き | く | く | け | け |
言 | は | ひ | ふ | ふ | へ | へ |
※気をつけるべき行
・ハ行…未然形にした時、「〜ワ・ず」と発音するもの。
◎上二段活用(〜イ・ず)
イ、ウの二段を使う。現代語の上一段活用に相当する。ただし、現代語とは言い切り方(終止形)が違う。
語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
---|---|---|---|---|---|---|
イ | イ | ウ | ウる | ウれ | イよ | |
恋 | ひ | ひ | ふ | ふる | ふれ | ひよ |
朽 | ち | ち | つ | つる | つれ | ちよ |
※気をつけるべき行
・ヤ行…「老ゆ」、「悔ゆ」、「報ゆ」の三語。
・ハ行…ヤ行以外で、未然形にした時、「〜イ・ず」と発音するもの。
・ダ行…未然形にした時、「〜ジ・ず」と発音するもの。
◎下二段活用(〜エ・ず)
ウ、エの二段を使う。現代語の下一段活用に相当する。ただし、現代語とは言い切り方が違う。
語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
---|---|---|---|---|---|---|
エ | エ | ウ | ウる | ウれ | エよ | |
見 | え | え | ゆ | ゆる | ゆれ | えよ |
耐 | へ | へ | ふ | ふる | ふれ | へよ |
※気をつけるべき行
・ア行…「得」(「心得」)のみ。
・ワ行…「植う」、「飢う」、「据う」の三語。
・ヤ行…ア行、ワ行以外で、未然形にした時、「〜エ・ず」と発音するもののうち、語尾に「ゆ」が使われるもの。
・ハ行…ア行、ワ行以外で、未然形にした時、「〜エ・ず」と発音するもののうち、語尾に「ふ」が使われるもの。
・語幹と語尾の区別がないもの。「得」、「寝」、「経」(通常、語幹は漢字で書き、活用語尾を送り仮名にするので、漢字を当てた場合、活用によって、漢字の読み方が変わってしまいます。)
四段・上二段・下二段の動詞は沢山あるので、気をつけるべきもの以外は、いちいち活用を覚える必要はありません。通常、打消の助動詞「ず」を付けて(つまり未然形にして)識別します。
〜ア・ず なら、四段活用
〜イ・ず なら、上二段活用
〜エ・ず なら、下二段活用となります。
ただし、気をつけたい点があります。
生徒に「行く」に「ず」を付けてごらん、と言うと、「行かず」と正しく答えてくれることもありますが、「行けず」と答える子も、かなりいます。
しかし、「行けず」は、「行く」+「ず」ではなく、「行ける」+「ず」で、「行くことができない」という意味になります。「行ける」のように、可能(〜ことができる)の意味を含んだ動詞を「可能動詞」といい、現代語では普通に使いますが、古文では使いませんので、注意してください。
また、「たつ」など、同じ言い切り方で、複数の活用があるものも数多く存在します。
「たつ」+「ず」で「たたず」となる四段活用なら、現代語でも「たつ(立つ/起つ…など)」ですが、
「たつ」+「ず」で「たてず」となる下二段活用なら、現代語では「たてる(建てる…など)」
となります。
問二 次の傍線部の動詞の活用の行、種類、活用形を答えなさい。
① 木を植ゑて
( )行( )活用( )形
② 言へども
( )行( )活用( )形
③ 何をか食ふ。
( )行( )活用( )形
④ 越えよ
( )行( )活用( )形
⑤ 戸を閉ぢて
( )行( )活用( )形
◎上一段活用
イ段のみを使う。現代語でも上一段活用になるものが多く、「着る」、「見る(試みる、顧みる、鑑みる)」、「似る」、「煮る」、「射る」、「鋳る」、「居る」、「率る(ひきゐる、もちゐる)」、「干る」がある。「もちゐる」などの複合動詞を除き、すべて語幹と語尾の区別がない。
語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
---|---|---|---|---|---|---|
イ | イ | イる | イる | イれ | イよ | |
(率) | ゐ | ゐ | ゐる | ゐる | ゐれ | ゐよ |
(着) | き | き | きる | きる | きれ | きよ |
語幹を( )で囲んだのは、語幹と語尾の区別がないからです。
※気をつけるべき行
・ヤ行…「射る」、「鋳る」の二語。
・ワ行…「居る」、「率る」(「ひきゐる」、「もちゐる」を含む)の二語。
◎下一段活用
エ段のみを使う。「蹴る」のみ。一語だけなので覚えるのは簡単ですが、現代語の感覚だと、
「蹴る」+「ず」で、「けらず」となるので、要注意。
語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
(蹴) | け | け | ける | ける | けれ | けよ |
◎カ行変格活用
「来」のみ。語幹と語尾の区別がなく、漢字の読み方が変化するのは、下二段の「得」、「寝」、「経」と同じですが、こちらは、現代語でも漢字の読みが変わりますから、普通に読むことができるでしょう。命令形が「こ」、「こよ」の二通りあるので注意。
語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
---|---|---|---|---|---|---|
(来) | こ | き | く | くる | くれ | こ(よ) |
◎サ行変格活用
「す」のみ。ただし、「おはす」、「変ず」、「奏す」、「啓す」など、複合動詞が多いので注意。漢字を音読みする動詞は、すべてサ変です。
語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
---|---|---|---|---|---|---|
(す) | せ | し | す | する | すれ | せよ |
◎ナ行変格活用
「死ぬ」、「いぬ(往ぬ/去ぬ)」の二語。
語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
---|---|---|---|---|---|---|
死 | な | に | ぬ | ぬる | ぬれ | ね |
◎ラ行変格活用
「あり」、「居り」、「侍り」「いまそかり(いますかり、いまそがり、いますがり)」の四語。動詞の中でラ変だけがイ段で言い切ります。
語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
---|---|---|---|---|---|---|
あ | ら | り | り | る | れ | れ |
※上一・下一・カ変・サ変・ナ変・ラ変は、数が少ないので、すべて記憶しましょう。ただ、上一段は、やや数が多いので、「き・み・に・い・ゐ・ひ」や、「ひ・ゐ・き・に・み・いる」といった覚え方があります。
問三 次の括弧内の動詞の活用の行、種類、活用形を答えなさい。
① (いまそかり)けり。
( )行( )活用( )形
② ここより(いね)。
( )行( )活用( )形
③ 直衣(着る)人
( )行( )活用( )形
④ 鞠を蹴よ。
( )行( )活用( )形
⑤ ここにこそおはすれ。
( )行( )活用( )形
問四 次の括弧の中の動詞を、適当な活用形になおしなさい。
① いまだ( く )ずや。 ( )
② いにしへを( かへりみる )時 ( )
③ 昔、男( あり )けり。 ( )
④ こち( ゐる)て来。 ( )
⑤ いかに( す )む。 ( )